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電動化と新車価格上昇の波は自動車小売業にどのような影響を与えるのか

コラムテーマ:事業戦略

コンサルタントコラムをお読み頂いている皆様、いつもありがとうございます。
船井総合研究所 モビリティ支援部マネージングディレクターの服部憲です。

日本も2035年を目途に新車販売における電動車比率100%を宣言してから、約1年半が経ちました。
この1年余りで、三菱自動車、日産自動車、トヨタ自動車、SUBARUの4社は日本国内でもPHEV・EVを続々と導入しています。

今回はこの現在の状況から見て、今後はどのようなことに自動車小売りをされている経営者様が、何に気を付けていかなければならないのか、改めて考えていきたいと思います。

国内市場、海外市場においてEV・PHEVの生産は加速しています。ただし、コロナ禍・半導体不足でまだまだ生産が追い付いていない現状もあります。

ただ直近の決算状況を見ても、結果的に自動車メーカーは円安・為替などの外的環境はあるものの、昨年度および第一四半期の売上は多くの企業で前年比プラスの進捗となっています。

それはなぜか、インフレと電動化によって自動車販売価格が上昇をしていることが考えられるからです。
販売単価が上がり、販売(登録)台数が減少していても売上は維持できる環境がカーボンニュートラルとコロナ禍いう大義名分によって実現しました。

新車市場が電動化することにより、既製のガソリン中古車の流通も減少したことで中古車市場も相場が高騰することになりました。
その為、一時的に中古車販売事業においても売上単価が上昇していき、集客が出来る販売店は売上が現状維持できてしまう環境が結果的に整ってしまいました。

過去の変遷と比較しても、プリウスに代表されるハイブリッド車の登場による上昇率を超えるスピードで上がっているのが現在です。

 

販売単価の上昇が与える自動車小売業への影響とは

では、販売単価が自動車販売店に与える影響とは何があるでしょうか。

日本国内は海外と比べ、収入が増えていない中で物価が上昇している形の為、これまで販売してきた消費者の方々のニーズを適切に捉えることが難しくなってきました。

2010年頃は約100万円で買えた軽自動車も、2020年には150万円を超える単価に上昇し、普通乗用車に至っては2010年の250万円前後から2022年は350万円を超える単価になってきています。(※)

このような環境により、今まで同様のカテゴリーの商品を持っていても同等の客層に商売をするのは容易ではないほど、時代は変化しているのです。
恐らく、中古車販売店や新車販売専業店で柔軟に変化しながら経営が出来ている企業様は非常に稀有なのではないでしょうか。

これからの時代に自動車販売店が取り組まなければならないことをお伝えしたいと思います。

※総務省 小売物価統計調査より

自動車販売店において物価上昇へどのように順応していくかは、自動車メーカー・ディーラーの動きを適切に参考にしていくことが重要です。

最も自動車購入のトレンドとして、大きな流れはサブスク・ファイナンスビジネスです。
10年ほど前から、ディーラーは残クレ(残価設定型ローン)を導入強化をしており、さらに数年前から新車リース販売が世の中では普及するようになりました。近年はKINTOや楽まるのように自動車メーカーがサブスク・リースを推進するようになっています。
これは結果として、自動車物価上昇トレンドを吸収するためのものとなりました。安全性の高いサブスク商品をお客様に選択してもらうことで、これまで同様にその時代の高性能新車を購入することを可能にし、さらにサブスク・リース・残クレのように残価があることのリスクから代替え(乗り換え)周期を早めることにも繋がってきています。
現在、新車生産が遅れている中、新車ディーラーではこれにより既存顧客の早期代替えを推進することもでき、車輌のサイズアップ・グレードアップなどのアップセルを実現しており、結果的に台数減を売上単価アップでカバーすることにもなっています。

現在、メーカー・ディーラーでは、従来の「残クレ」「リース」「据え置き2回払い」の3種類を客層に合わせて販売提案していく流れになっており、ファイナンス商品を軸とした顧客の囲い込みもより強固になっていくことが想定されます。

現在、新車を主に販売される企業様においては、現金・ローンの従来型の購入方法だけでなく、3つ以上の購入サービスを提供できる体制を構築することをオススメいたします。

 

中古車もサブスクの波が近い将来やってくる

新車は残クレ・リース・据え置き払い・保険付きローン等、分割市場が加速度的に成長していくことが言えます。電動化や高性能化がそれを後押しすることは間違いありません。

この流れは、遅れて中古車市場でも活性化することになります。

中古車市場は新車に影響を受けて今後も相場が高騰・高止まりすることは間違いありませんので、中古車においても、これまでと同じ資金で同等以上の自動車に乗ることは困難となり、同額だと低年式化になっていくこともなりますので、消費者目線で考えるとサブスクや分割ニーズが上がることは想定できます。

現在、トヨタ自動車の子会社であるKINTOにおいても中古車リースが始まり、昨年からスズキも中古車リースをサービス導入することになりました。

メーカー・ディーラーが新車だけでなく中古車もサブスク化を推し進めていることもあり、中古車市場でもファイナンスを絡めた購入サービスが続々と普及することになりますので、現金型(車両本体価格)での商売だけでは確実に減退することになりますので、まずは中古車リースを導入検討されることをオススメいたします。

 

電動化の今後

電動化と自動運転等による物価上昇があまりにも大きく、欧州の一部でも電動化、特にEV普及の勢いが少し減退していることもあります。

やはり物価上昇が大きすぎると普及率が難しくなります。
さらには2040年を基準にしても、購入価格がガソリン車と電気自動車が同価格になる事はないとの意見も一部ではあるため、やはりバッテリー・モーターの開発競争がまだまだ重要であることは間違いありません。

改めて、新車市場の電動化は緩やかでも確実に進んでいきますが、中古車市場は更に緩やかな20~30年単位での動きとなります。ただし電動車かガソリン車かではなく、どちらもが価格上昇の波が続いている為、自動車ビジネスの考え方は商品ではなく、「顧客サービス」を起点に考えて頂くことが重要です。

今後は、顧客サービスで強いビジネスモデル等も発信してまいりたいと思います。

もし様々な内容にてご相談がある場合はお気軽に船井総研までお問い合わせください。
セミナー等も多数開催しておりますので、ご興味がある企業様・経営者様はぜひご参加頂けますと幸いでございます。

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このコラムを書いたコンサルタント

服部 憲 (はっとり けん)

船井総合研究所入社後、モビリティ支援部において、自動車メーカー・自動車正規ディーラーをはじめ、 中古車販売業、自動車整備業の業績アップのお手伝いをしている。既存事業の業績向上を始め、事業戦略・新規ビジネスの支援、評価制度・組織活性化の支援まで実施している。衰退業界において「即時業績アップ」を信条に、販売・整備・鈑金・組織活性化・財務・M&A等幅広い分野での具体的な提案に各経営者から好評を得ている。

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